会社や個人事業を経営していると、売上、資金繰り、人材、集客、IT活用など、さまざまな問題が発生します。
また、これから起業したい方の場合も、事業計画の作り方や資金の準備、顧客の集め方など、何から始めればよいのか分からないこともあるでしょう。
そのようなときに活用したいのが、中央区が実施している「出張経営相談」です。
出張経営相談では、経営の専門家である中小企業診断士が事業所などを訪問し、経営上の悩みについて無料で相談に応じてくれます。
一般の事業者は年度内3回まで、中央区で初めて創業する予定の方や、初めて創業してから5年未満の方は年度内5回まで利用できます。相談のために中央区役所へ出向く必要がなく、希望する場所で専門家から助言を受けられることが大きな特徴です。
この記事では、中央区の出張経営相談について、利用できる人、相談できる内容、申し込み方法、創業者が利用するメリットなどを分かりやすく解説します。
目次
中央区の出張経営相談とは?
中央区の出張経営相談は、区内の事業者や創業予定者を対象とした無料の経営相談制度です。
専門の相談員である中小企業診断士が、事業所などへ訪問し、経営に関する相談を受け付けます。
中小企業診断士とは、会社や店舗の経営状況を分析し、経営改善のための助言を行う専門家です。
税理士が税金や会計を中心に扱い、弁護士が法律問題を扱うのに対し、中小企業診断士は経営全体について幅広く相談できる点が特徴です。
例えば、次のような相談が考えられます。
- 売上を増やすには何を見直せばよいか
- 資金繰りを改善する方法はないか
- 融資を受けるために何を準備すればよいか
- 新しい商品やサービスを始めたい
- ホームページやITを経営に活用したい
- 新しい取引先や顧客を増やしたい
- 従業員の採用や管理に悩んでいる
- これから中央区で起業したい
経営について相談したくても、「誰に聞けばよいか分からない」「民間のコンサルタントに依頼すると費用が高い」と感じる事業者も少なくありません。
中央区の出張経営相談であれば、一定の条件を満たす方は無料で利用できます。
中小企業診断士が事業所まで来てくれる
この制度の大きな特徴は、相談者が区役所の相談窓口へ行くのではなく、中小企業診断士が事業所などへ出向いてくれることです。
事業主は、営業時間中に長時間店舗を離れられないことがあります。
従業員が少ない会社や、一人で事業を行っている個人事業主の場合は、区役所の開庁時間に相談へ行くこと自体が難しいケースもあるでしょう。
出張経営相談は、このような事業者も利用しやすいように設けられています。
実際の事業所で相談できるため、相談員に店舗や設備、仕事の流れなどを見てもらいながら説明できることも利点です。
口頭だけでは伝えにくい問題も、現場を見てもらうことで、より具体的な助言につながる可能性があります。
ただし、希望した相談員を指名したり、相談日を完全に指定したりできるとは限りません。相談員の予定などによっては、希望どおりにならない場合があります。
利用料金と相談回数
中央区の出張経営相談は無料です。
令和8年度の受付期間は、令和8年4月1日から令和9年3月31日までです。
利用できる回数は、相談者によって異なります。
| 利用者 | 無料相談の上限 |
| 一般の事業者 | 1事業所につき年度内3回まで |
| 創業予定者·創業後5年未満の対象者 | 年度内5回まで |
創業者については、令和8年度から支援対象が広げられています。
中央区で初めて創業する予定の方、または中央区で初めて創業してから5年未満の方は、年度内5回まで相談を利用できます。
1回の相談ですべての問題を解決しなければならないわけではありません。
例えば、1回目に現在の状況を整理し、2回目に事業計画や資金計画を確認し、3回目に集客方法を検討するといった使い方も考えられます。
創業者の場合は、条件を満たす形で複数回利用することにより、後ほど説明する「特定創業支援等事業」の証明書を申請できる可能性もあります。
出張経営相談を利用できる人
すべての事業者が対象になるわけではなく、個人事業主、法人、創業者ごとに条件があります。
個人事業主の場合
個人事業主は、中央区内に住所または事業所がある方が対象です。
中央区に住んでいる方については、東京都内に事業所があることが条件とされています。
相談には、事業主本人が出席しなければなりません。従業員や家族だけが代理で相談を受けることはできません。
法人の場合
法人は、中央区内に法人登記があり、実際に中央区内で事業を行っていることが必要です。
登記上の本店所在地だけが中央区にあり、実際には事業活動を行っていない場合は、対象にならない可能性があります。
相談には法人の代表者本人が出席する必要があります。
これから創業する人の場合
現在は事業を行っておらず、中央区内で初めて創業する予定の方も対象です。
具体的な事業内容や創業時期、創業予定地などを整理したうえで相談すると、より具体的な助言を受けやすくなります。
創業後5年未満の人の場合
中央区で初めて創業してから5年未満で、次のいずれかに該当する方も対象です。
- 中央区内に法人登記と事業所がある法人
- 中央区内に事業所がある個人事業主
ただし、すでに別の事業や会社を経営している方が、2社目の会社を設立する場合は、創業者向け支援の対象にはなりません。
相談には、創業予定者または代表者本人の出席が必要です。
どのようなことを相談できる?
中央区の公式サイトでは、次のような相談内容が例として挙げられています。
- 人事や労務管理
- 財務改善
- 資金調達の方法
- IT活用による経営効率化
- 販路開拓
- 創業相談
- 事業承継
- 事業の多角化
- 事業の清算
- ホームページ作成
このほかにも、経営に関する相談を幅広く受け付けています。
ここからは、実際にどのような場面で相談を活用できるのか、具体的に説明します。
売上や集客について相談する
売上が伸びない場合、原因は一つとは限りません。
商品に問題がある場合もあれば、価格、販売方法、顧客層、広告、ホームページなどに改善点がある場合もあります。
中小企業診断士へ現在の売上状況や顧客層、販売方法を説明することで、どこから見直すべきかを整理できます。
ただし、中小企業診断士が営業活動を代行したり、直接顧客を紹介したりする制度ではありません。
あくまでも、経営者自身が改善を進めるための考え方や方法について助言を受ける制度です。
資金繰りや融資について相談する
「売上はあるのに現金が足りない」「設備投資をしたいが資金を準備できない」といった悩みも相談できます。
毎月の収入と支出、借入金、今後必要になる費用などを整理し、資金繰りを改善する方法を検討します。
金融機関から融資を受けたい場合は、事業計画や資金計画をどのように整理すべきかについて相談することも可能です。
ただし、相談を受けたからといって、融資が必ず認められるわけではありません。
金融機関の融資には別途審査があります。
ホームページやITの活用を相談する
ホームページを作成したい場合や、予約管理、顧客管理、会計、在庫管理などにITを導入したい場合も相談できます。
例えば、次のような悩みです。
- ホームページを作った方がよいか
- ネット予約を導入したい
- SNSとホームページをどう使い分けるか
- 紙の作業を減らしたい
- 業務管理を効率化したい
- ネット販売を始めたい
相談員がホームページそのものを制作するわけではありませんが、何を目的に作るのか、どのような情報を掲載するのか、費用をかけるべき部分はどこかといった経営面の相談ができます。
新規事業や事業多角化を相談する
既存事業の売上が伸び悩んでいる場合、新しい商品やサービスを始めたいと考えることもあるでしょう。
出張経営相談では、新規事業の市場性、必要な資金、自社の強み、既存事業との相性などを整理できます。
思いついた事業をすぐに始めるのではなく、第三者の専門家に相談することで、見落としていた問題やリスクに気づける可能性があります。
廃業や事業承継も相談できる
相談できるのは、売上を増やすための前向きな相談だけではありません。
後継者へ事業を引き継ぎたい場合や、事業の継続が難しく清算を検討している場合も相談できます。
事業承継や廃業には、税金、法律、金融機関、従業員、取引先などが関係します。
中小企業診断士だけでは対応できない専門分野については、どの専門家や支援機関へ相談すべきかを整理するきっかけにもなるでしょう。
対応してもらえない相談もある
出張経営相談は、無料の経営相談です。
そのため、相談員が実務を代行することはできません。
中央区の公式サイトでは、対応できない相談として、次のような例が挙げられています。
- 営業や生産業務の代行
- 補助金や助成金の申請書作成
- 受注先や発注先の紹介·あっ旋
- 交渉や手続きへの同席
- 会社や事業の価値の査定
- 人生相談など、経営相談に当てはまらない内容
例えば、補助金について相談することはできても、申請書を相談員に代わりに作成してもらうことはできません。
ホームページについて相談することはできても、相談員が無料でホームページを制作してくれるわけではありません。
「何をすればよいかを一緒に整理してもらう制度」であり、「仕事そのものを代行してもらう制度」ではないと考えると分かりやすいでしょう。
創業者は4回以上の相談で証明書を申請できる
中央区で創業予定の方や、初めて創業してから5年未満の対象者にとって、出張経営相談にはもう一つ大きなメリットがあります。
創業者向けの出張経営相談は、「特定創業支援等事業」に位置付けられています。
1か月以上の期間をかけて4回以上相談を利用し、経営、財務、人材育成、販路開拓に関する知識を習得すると、中央区へ証明書の交付を申請できるようになります。
この証明書を取得すると、条件を満たす場合に、次のような優遇措置を受けられる可能性があります。
会社設立時の登録免許税が軽減される
中央区内で株式会社または合同会社を設立する場合、登録免許税が軽減されます。
株式会社の登録免許税の最低額は、通常15万円ですが、軽減後は7万5,000円になります。
合同会社では、通常の最低額6万円が3万円になります。
ただし、登録免許税の軽減を受けるには、会社を設立する前に証明書を取得し、登記の際に証明書の原本を法務局へ提出する必要があります。
会社を設立した後から申請しても、すでに支払った登録免許税の返金を受けることはできません。
創業関連保証を早い時期から利用できる
証明書がある場合、無担保·第三者保証人なしの創業関連保証を、事業開始の6か月前から利用できる可能性があります。
通常は事業開始の2か月前からであるため、創業準備の早い段階から保証制度を利用できる点がメリットです。
ただし、証明書を持っているだけで保証が受けられるわけではなく、信用保証協会や金融機関による審査があります。
日本政策金融公庫の融資で優遇を受けられる可能性がある
日本政策金融公庫の「新規開業·スタートアップ支援資金」を利用する際、貸付利率引き下げの対象となる可能性があります。
こちらも、証明書があれば必ず融資を受けられるという意味ではありません。
融資の利用には、日本政策金融公庫による審査があります。
小規模事業者持続化補助金の創業型を申請できる可能性がある
条件を満たす場合は、「小規模事業者持続化補助金<創業型>」の申請対象になる可能性もあります。
中央区の公式サイトでは、補助上限は200万円、補助率は3分の2と案内されています。
ただし、支援を受けた日や開業日が、公募締切時から過去1年以内であることなどの条件があります。
制度内容や募集時期が変更されることもあるため、実際に申請するときは最新の公募要領を確認する必要があります。
証明書を取得したい場合の注意点
特定創業支援等事業の証明書を取得したい場合は、単に4回相談すればよいわけではありません。
1か月以上の期間をかけて4回以上相談し、経営、財務、人材育成、販路開拓について学ぶ必要があります。
また、すべての相談に代表者本人が出席しなければなりません。代理の人が出席した回は、証明書の要件を満たさない可能性があります。
相談開始から証明書交付までには、最短でも2か月弱かかると案内されています。
証明書の交付申請後も、発行まで土日祝日を除いて7日から10日程度かかります。
会社設立日が決まっている場合は、登記の直前に相談を始めても間に合わない可能性があります。
登録免許税の軽減などを利用したい方は、創業予定日から逆算して、早めに出張経営相談を申し込むことが重要です。
申し込みから相談までの流れ
出張経営相談の申し込みは、中央区の公式サイトに掲載されているLoGoフォームから行います。
一般の事業者用と創業者用で申込フォームが分かれているため、自分に合ったフォームを選びます。
基本的な流れは次のとおりです。
- 中央区の公式サイトから依頼フォームを開く
- 事業者情報や連絡先を入力する
- 相談したい内容を入力する
- 中央区または担当者からの連絡を受ける
- 相談場所や日時などを調整する
- 中小企業診断士による相談を受ける
申込内容について、中央区から確認の電話が入る場合があります。
申込フォームには、日中に連絡を受けやすい電話番号を入力しておきましょう。
相談前に準備しておきたいもの
相談時間を有効に使うためには、現在の状況を説明できる資料を準備しておくことが大切です。
相談内容によって異なりますが、次のような資料が役立ちます。
- 会社や事業の概要
- 商品·サービスの資料
- 直近の売上や経費が分かる資料
- 決算書や試算表
- 資金繰り表
- 事業計画書
- ホームページやSNSの情報
- 現在利用している広告の資料
- 相談したい内容をまとめたメモ
すべてを用意する必要はありません。
まずは、「現在どうなっているのか」「何に困っているのか」「どうなりたいのか」の3点を整理するだけでも、相談しやすくなります。
例えば、「売上を増やしたい」という相談だけでは、問題の範囲が広すぎます。
「新規顧客が少ない」「既存顧客の再来店率が低い」「ホームページから問い合わせがない」など、できるだけ具体的に伝えることが重要です。
出張経営相談を上手に活用するポイント
無料相談を有効に使うためには、中小企業診断士にすべてを任せるのではなく、自社の問題を整理する機会として活用することが大切です。
相談したいことを一つずつ整理する
資金繰り、集客、採用、ホームページ、新規事業など、悩みが複数ある場合は、優先順位を決めましょう。
最も早く解決しなければならない問題から相談すると、限られた相談回数を有効に使えます。
数字や事実を準備する
「最近、売上が悪い」と説明するよりも、「前年同月と比べて売上が20%減った」と伝えた方が、相談員も状況を判断しやすくなります。
売上、利益、顧客数、問い合わせ数、広告費など、可能な範囲で数字を準備しておきましょう。
助言を受けた後に実行する
相談を受けただけでは、経営は改善しません。
相談後に何を行うのかを決め、実行した結果を次回の相談で確認すると、継続的な改善につながります。
例えば、1回目の相談後にホームページを修正し、2回目の相談で問い合わせ数の変化を確認するといった使い方です。
まとめ
中央区の出張経営相談は、中小企業診断士が事業所などを訪問し、経営上の悩みについて無料で助言してくれる制度です。
一般の事業者は1事業所につき年度内3回まで、対象となる創業予定者や創業後5年未満の方は年度内5回まで利用できます。
相談できる内容は、財務改善、資金調達、販路開拓、IT活用、人事労務、創業、事業承継、事業多角化、ホームページ作成など幅広く設定されています。
ただし、営業活動や申請書作成などの実務を代行してもらうことはできません。
あくまでも、経営者が問題を整理し、改善へ向けて行動するための助言を受ける制度です。
また、中央区で初めて創業する方は、1か月以上にわたって4回以上相談を利用することで、特定創業支援等事業の証明書を申請できる可能性があります。
証明書を取得すると、会社設立時の登録免許税の軽減や、創業融資·信用保証、補助金申請に関する優遇を受けられる場合があります。
中央区内で事業を行っており、経営上の悩みを抱えている方や、これから中央区で創業を予定している方は、一人で悩み続ける前に、出張経営相談を活用してみるとよいでしょう。
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