クラウドソーシングのランサーズが発表した「新・フリーランス実態調査 2021-2022年版」によると、2021年の日本のフリーランス人口は1,577万人、経済規模は23.8兆円であるとのこと(参照URL:https://www.lancers.co.jp/news/pr/21013/ )。2020年1月の調査においてはフリーランス人口が1,062万人、経済規模は17.6兆円だったとのことから、フリーランスはコロナ禍を経て大きく増加したことがわかります。
フリーランスという働き方は、働き方改革の中で伸びている労働形態のひとつではあるものの、不安定な収入や社会的地位の低さという点がネックとも言えるため、今後どのような動きを見せるのかは気になるところです。特にコロナ禍が終息に向かっている今、テレワークやリモートワークも解消された企業も増え、フリーランスとして働く方の動向は気になるところです。
今回はフリーランス人口の今後の予測について見ていきたいと思います。
フリーランスという働き方
フリーランスは個人事業主と同じに捉えられることがありますが、厳密には別のものを指します。フリーランスとは企業に属さずに働く働き方の総称を言い、個人事業主は開業届を税務署に提出したうえで、個人にて事業をスタートした人を言います。開業届を出して事業を行っている方がフリーランスを名乗っているのをよく見かけますが、フリーランスと個人事業主の定義はあいまいなところもあるので、どちらを名乗るかは個々で異なります。
先ほどのフリーランス実態調査によるフリーランス人口の1,577万人という数字、こちらは非常に多く感じる人もいるでしょう。これは、企業に属しながら副業で収入を得た人も含んでいます。フリーランスと言えば、企業に属さず自宅やカフェ、レンタルオフィスやシェアオフィスで仕事をしているイメージがありますが、時間や環境にとらわれることなく働いている人がフリーランスと思っている人も多いでしょう。そのため、副業が増えている現在、フリーランスとして働く人は数字の上では非常に増えているのが現状です。
ちなみに、2020年に内閣官房日本経済再生総合事務局が発表した「フリーランス実態調査結果(URL:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaig/suishinkaigo2018/koyou/report.pdf
)」では、フリーランスは462万人となっており、実態としては1,577万人のおよそ1/3程度しか試算されていません。つまり、大手クラウドソーシングが発表している数値と政府が把握している数値の乖離は、フリーランスを本業としているか、単にサービスに登録している幽霊会員も含めるかどうかで大きく異なっていることが見て取れます。
発注側はフリーランスをどう見ているか?
フリーランスという働き方は、時間的にも環境的にも自由度が高いのが特長です。そんなフリーランスについて、発注する企業側はどう思っているのでしょうか?
フリーランスへの発注メリットとして
- 人件費の抑制
- 発注額が安く済む
- 専門的スキルを持った人間に依頼できる
といったメリットがあります。
人件費の抑制
フリーランスを企業が活用するメリットの最たるものは、人件費の抑制にあります。正規雇用している社員に比べて、フリーランスであれば福利厚生面などを考えずに済みますし、閑散期など業務量に応じて人員を調整できる点を考慮すると非常に使い勝手がよいことは明白です。
発注額が安く済む
まれに、技術的に難しいものの場合に高額となる場合もありますが、法人企業と比べてフリーランスに発注額を安く済ませられる点もメリットのひとつです。あまり安すぎると「この人大丈夫かな?」という不安はありますが、総じて法人に依頼するよりは安く発注できます。
専門的スキルを持った人間に依頼できる
またフリーランスへの発注は、その道の専門家に依頼できる点で、無駄な労力を排除することができます。社内のメンバーがスキル不足の場合、勉強しながら業務をさせることになったり、何度もやり直しの手間がかかったりするケースがありますが、フリーランスへの依頼であれば、事前にこれまでの実績や成果物を確認した上で発注することができるので、成果物の精度や納期の遅れが起こりにくいです。
一方でフリーランスへの発注デメリットとして
- 大きな案件を任せにくい
- 情報漏洩の危険性が高い
- 継続して案件を依頼できない
といったことがあります。
大きな案件を任せにくい
フリーランスは基本的に1人で対応することが多いため、大規模な案件を任せることが難しいです。なかにはプロジェクトチームを組んで案件に対応するフリーランスもいますが、フリーランスの集合体であることが多く、管理面からも不安が生じます。法人のなかにも1人会社や小規模事業者はありますが、社会的信用面からしても、案件範囲が限定されてしまうのが企業側のフリーランスへの発注デメリットと言えるでしょう。
情報漏洩リスクがある
フリーランスが行う業務の中には、企業の機密情報や顧客情報を取り扱うものもあります。他のクライアントの中には企業にとっての同業他社がいないとは限りませんので、情報漏洩のリスクがあることは否めません。そのため、情報に関する取扱い方法を明確にしたうえで、どこまでの情報を見せれば仕事に差し支えないかの線引きだけは明確にしておきましょう。
継続して案件を依頼できないケースも
仕事の実態が見えにくいフリーランスの場合、自社の案件以外にもたくさんの案件を受けていることがある場合、優先的に仕事を受けてもらえないこともあります。基本的に依頼しやすいのがフリーランスの良さでもありますが、雇用契約がない以上、依頼できるかどうかはその時の状況によったり、フリーランス側のクライアント優先度によって変わってきます。
期待しすぎると、いざという時に依頼できず納期に間に合わなくなるなどの恐れがあるので、普段から現在の状況把握やキャパシティについて確認するようにしておきましょう。
フリーランスは稼げるか?
先ほど紹介した内閣官房日本経済再生総合事務局発表の「フリーランス実態調査結果」によると、フリーランスとしての年収レンジで一番多いのは「200万円以上300万円未満(19%)」となっています。実のところ雇用者としての年収とほとんど同じため、一見フリーランスより雇用者のほうが福利厚生もしっかりしているし、社会的なステータスもあるのでいいのではないか?と思う人もいるかもしれません。
しかし雇用者の場合、収入を大幅に上げるのは非常に難しく、昇給があっても通常数千円~数万円というのが実情でしょう。その点、フリーランスであれば、仕事をきちんとこなし営業ができる人であれば、年収1,000万円を目指すこともできます。実際に全体の数%ですが1,000万円以上稼いでいるフリーランスもいます。
また、本業を持ちながら副業フリーランスとしても活動する人もいるようですが、その場合のフリーランス収入は年収100万円未満が最も多いと出ています。年間で100万となると月8万円前後の副収入となりますので、年収が200万円以上300万円未満かなりよいかもしれません。とはいえ、すでに年収が600万程度稼いでいる方だと、100万円ぐらいの収入では本業を頑張った方がお金になる可能性もありますし、判断が難しいところです。
フリーランスで稼げる業種とは?
フリーランスで稼ごうと思ったなら、やはり単価の高い業種で活躍することです。現在単価の高いフリーランス案件といえばIT系・クリエイティブ系が圧倒的に多く存在しています。
- グラフィックデザイナー
- イラストレーター
- 動画クリエイター
- Webライター
- Webマーケター
- システムエンジニア
- AIエンジニア
中には、年収1,000万円も夢じゃない業種もあり、フリーランスで稼ぐには高いスキルを身に付けることが近道と言えます。特に日本ではIT業界の人材不足が顕著で、2030年にはIT人材が最大80万人不足するという経済産業省のデータもあります。
その一方で、誰でもすぐに参入できる業種の場合には、仕事は取りやすいものの単価が安く設定され、稼ぐにはかなりハードルが高くなります。
フリーランスの今後はどうなる?
最初にお伝えしたように、フリーランス人口は年々増えており、さらには本業があるビジネスパーソンの副業としても行われている働き方です。そのために競合は非常に多く、安易にフリーランスになったものの仕事がもらえずサラリーマンに戻るといった人も多く出てくる可能性は高いでしょう。また、営業が苦手な人の場合にはランサーズやクラウドワークスといったサービスを利用している人もいると思いますが、案件欲しさに単価競争に巻き込まれ安請け合いしてしまいぜんぜん儲からない、というケースもさらに今後増えるかもしれません。
そうならないためにもフリーランスとして生き残るためには、高いスキルを求められる業種に身を置いて経験を積むこと、営業を行える・案件を取れる人になること、他社との差別化ポイントをアピールできることが重要です。
ほかにもスキルの掛け合わせにより、替えが利かない人材になることで案件が途切れないフリーランサーになれる可能性は高まります。なかでもAI(人工知能)やブロックチェーンなどの分野の技術を持ち得たエンジニアなどは高いニーズが見込めますので、興味のある方はそれらのジャンルを目指してみると良いでしょう。
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